今回は白黒(無彩色)の「オーバーレイ」の使い方を紹介します。
よく使う「オーバーレイ」の使い方として、色をフィルムのように重ねて色の深みを出す方法がありますが、「オーバーレイ」は白黒で使ったときに透明感のある表現ができるのでオススメです!
※感覚的にわかりやすくまとめたかったため、あまり細かい計算式までは書いていません。
白黒オーバーレイでこんな表現ができる!
白黒オーバーレイの効果
- 白く塗ったところを明るくする
- 黒く塗ったところを暗くする
- 灰色(R128,G128,B128)が起点となり、灰色に塗ったところには効果が出ない
この効果は「PhotoShop」でも「ClipStudioPaint」でも一緒です。
文字で書くと似たような効果になるものとして、「スクリーン」「乗算」がありますが、次に示す画像のように「オーバーレイ」の白黒は「スクリーン」「乗算」とは明らかに違う結果が得られます。
「オーバーレイ」の白と「スクリーン」の白の違いが分かりづらいかもしれませんが、クリックして拡大してみると、下の画のでこぼこが「オーバーレイ」の方が透けて見えるのがわかると思います。
比較してみると、「乗算」の黒は暗くするのではなく、黒くするのであって、「オーバーレイ」の結果とは明らかに異なっています。同様に「スクリーン」の白は明るくするのではなく、白くする(淡くする)という印象を受けるのではないでしょうか。
また、よく見ると白黒で使用した場合、「乗算」の黒、「スクリーン」の白はそれぞれ通常で描いた場合と差がないのがわかると思います。色が入っていると計算結果に差が出るのですが、白黒の場合、計算結果が通常と同じになるため、見た目も差が出ません。
対して、「オーバーレイ」は透きとおったまま、白い部分が明るく、黒い部分が暗くなっているのがわかると思います。
練習①:白黒オーバーレイでヒビを描く
簡単な写真レタッチをするのが描画モードを学ぶのにとても適しているので、以下の画像を作る練習をしてみたいと思います。
すぐ終わるので一回やってみると白黒オーバーレイの感覚がつかめると思います。イラストだけでなく、写真加工や3DCG用のテクスチャ作成の際にも有用な手法です。
ヒビを入れたい箇所に通常モードで黒く線を引く
エアブラシなどのぼけたブラシではなく、Gペンなどの固いブラシでかなり細くして描きます。上記の画像はブラシサイズを1pixで描いています。
ヒビ周りの下を向いているエッジを「オーバーレイ」で黒く塗る
この写真の場合、特別な照明を当てている画像ではないので、光の方向は上からと仮定して塗ってしまって問題ないです。なので、まずは影になるはずの下を向いているエッジ部分に黒を入れていきます。
通常モードで黒く塗る
新しくレイヤーを追加し、最初に描いたヒビを一回り太くするくらいのイメージで黒を塗ります。
「オーバーレイ」にして不透明度を下げる
描画モードを「オーバーレイ」にして、不透明度を25%に変更します。
レイヤーマスクを追加して、黒い部分の形状を整える
レイヤーマスクを適用すると、レイヤーマスク上の黒い部分を透過し、白い部分のみを画として残すことができます。普通にレイヤーで画を消してしまうと、消した画は復元できませんが、レイヤーマスクで行った場合、実際のレイヤーの画は消えていないので、マスク上で黒く塗った部分を白く塗りなおすと、画を復元することができるのです。そのため、描画モードで合成効果を調整する場合、レイヤーマスクで描いたり消したりしながらちょうどいいところを探るとやりやすいです。
ヒビ周りの上を向いているエッジを「オーバーレイ」で白く塗る
光が上から当たっているならば、上を向いているエッジにはハイライトが入るので、それを「オーバーレイ」で表現していきます。入れる場所と色が異なるだけで、手順は影と全く同じなので、説明は割愛し、画像にまとめます。
既にそれなりに陰影がわかる形になっていると思うので、影の時とは違い、全体を塗りつぶすのではなく、ある程度白を入れるエッジを絞ってしまった方が早いと思います。
不透明度や形状を細かく調整して下の画になじませる
実際に0から書いていくときは各レイヤーを行き来しながら調整を繰り返していきます。今回はシンプルにしていますが、それでも最初に描いたヒビが強すぎて馴染んでいないのが気になるので、少しだけ調整していきます。
最初に描いた通常黒のヒビもレイヤーマスク、不透明度調整をする
完成
アップで見るならもっと丁寧にやらないとダメですが、引いて見るとこれくらいの描き方で十分ヒビに見えるかと思います。
練習②:白黒オーバーレイで水が流れた跡を描く
上端に太めの黒い線を引く
「オーバーレイ」にして不透明度を下げる
指先ツールで下に引き延ばす
指先ツールで水が流れた方向に引っ張っていきます。全体を一様には引っ張りすぎず、適度にランダムになるように引っ張ります。
何枚か「オーバーレイ」を重ねて層を作る
「オーバーレイ」のレイヤー1枚だと不透明度を100%にしても、真っ白、真っ黒まではいかないため、効果を強めたい場合は、レイヤーをどんどん重ねましょう。形状そのままでよければ複製するだけでも大丈夫ですが、少し形状を変えたものを重ねるとよりそれっぽくなります(外側が薄く、内側がより濃くなるようにする、など)
作例とまとめ
練習では細かい部分までは詰めていませんが、もっと詰めていくと以下のような画を作れます。
これは過去に練習した時のもので、コンクリートの壁を激しく経年劣化させてみました。大きく割れた部分とパイプは写真合成していますが、ラインやヒビ、雨だれ、汚れなどは今回の「オーバーレイ」をメインにいくつかの描画モードを用いて描いています。
イラストに生かした例
白黒の「オーバーレイ」をベースに、「乗算」「スクリーン」「加算(発光)」などを重ねていくと上記のようなイラストを描くことができます。
左側のイラストの塗り方は別途記事をまとめてありますので、よろしければ合わせてご確認ください。(右側の光るちょうちょもいずれまとめます…!)
今回の記事は玖珂つかささんの線画をお借りして塗り絵をした際の工程をまとめてみました。 色の混ざった塗りをしてみたい方、重ね塗りや厚塗りに興味ある方の参考になると嬉しいです。 まだやったことない方向けなので、すでに慣れている方にとっては知[…]
まとめ
- 「オーバーレイ」は白い部分を明るく、黒い部分を暗くする
- 「乗算」「スクリーン」と違い、下の画を透かした状態を保つ
- 1枚で決めるより、不透明度の薄いレイヤーを何層も重ねるとより馴染む