キャラクターイラストのご依頼を進めていく中で、表情パターンの作成依頼をいただくことってありますよね。
今回は初めて表情パターンを作成する方向けに描く前に抑えておいた方がいいポイントを実例を基にまとめました。また、表情パターンを依頼したい方にとっても、思っていた仕上がりになるように描き手に伝えるべきポイントとして抑えておくと満足いく結果が得やすいかと思います。
最終的な仕上がり
ご相談~すり合わせ~着手まで
最初にいただいたご相談
どういうシチュエーションで使いたい表情かをヒアリングする
画像の赤枠の部分を明確にすることが大事です。
喜怒哀楽を描き手側が勝手に解釈して進めてしまうとお客さんにご満足していただくことは非常に難しいので避けた方がいいです!
LINEで友達とやり取りするときを思い浮かべていただくとイメージしやすいかと思います。非常に多くの感情を表すスタンプがありますが、それらを喜怒哀楽の4つに分類したとします。そうすると、喜の感情の中だけでも、ものすごく幅が出てしまいますよね。実際に作成するのは1つなので、これをすり合わせないまま、1つの喜を作成してしまっても、お客さんの思っている喜と描き手が考えた喜が一致する確率がめちゃくちゃ低いのがわかるのではないでしょうか。
お客さんにとって使い道がないものを作ってしまっては仕事としては大失敗です…!
これと同じで、ゲーム関連で「嬉しい」に限定しても、以下のような感情の違いがいくらでも出てくるのです。
- 超絶レアアイテムを「自分が」ゲットしてめちゃくちゃテンション上がった
- 超絶レアアイテムを「パーティメンバーが」ゲットして盛り上がっている
- 楽しみにしていた新しいアップデートが行われて、これから初めてそれを遊ぶ
- ゲーム内で友達に自キャラを褒められて嬉しい
- 超高難易度のクエストを初めてクリアできた
このことをお客さんにもお伝えし、「どういった感情、セリフ、シチュエーションで使いたいですか?」とヒアリングを進めていきましょう。はじめから流用する前提で表情を作ると感情がぼやけてしまうのであまり良くないものになりがちです。
自分でもお客さんを知る努力をする
ヒアリングと合わせて、もう一つ大事なことがあります。
お客さんの要望をヒアリングすると同時に、自分でもお客さんを知る努力をしましょう。例えば、今回のようにお客さんがすでにツイッターアカウントやゲーム実況動画などを配信している方であれば、それらを確認しながら自分なりに分析していきます。
- 配信者の方はどういったキャラクター性なのか
- 動画配信の方向性、テイストはどんな感じか
- 自分がイラストを付けるとしたら、どこにどんなイラストが入るとより良くなりそうか
少し、お客さんの立場になって考えてみましょう。
イラストに限らず、家や保険、携帯電話、ネット回線契約など、初めてだとどうやって買うのがいいかわからないものってありますよね。そんな時、お店の店員さんが丁寧に寄り添って説明をしてくれて助かったという経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。逆にひどい対応をされた場合、二度とそのお店には行かないのではないでしょうか。
多くの個人の方にとって、イラスト作成の依頼をするということは未経験で不安があるはずです。お客さんもどう伝えればいいのか、伝わっているのか迷っていることが多いので、こちらも良い店員さんのように積極的に歩み寄る姿勢を持っておきましょう。
仮にこれを全くやらないで、結果がうまくいかなかったとき、「最初に言わなかったんだから全部お客さんがいけない」と思ってしまう人には次から仕事が来なくなるので気を付けましょう。
新規作成なのか、表情差分なのか確認する
もし、表情差分の価格を先に設定していると誤解が生じがちな点だと思いますので、あらかじめ確認しておきましょう。
イラストを描く人からすると表情差分というと元の画をベースに目や口だけを描きなおす形でパターンを量産することだとある程度共通認識ができていると思いますが、前述のとおり、イラスト制作になじみのない無い方からすると右側の新規描き起こしのイラストも表情差分と認識している方もいらっしゃいます。
表情差分の認識ずれで起こりうる問題
- 描き手は表情差分ならコストを抑えて作れるので単価設定をベースより安く記載している
- お客さんは表情なら何でも安く作れる(表情差分の値段で作れる)んだと認識する
- 表情差分の値段で表情パターン作成依頼を進める
- 描き手は表情差分のつもりで描いたけど、お客さんは新規描き起こしのつもりだったので揉めてしまう…!
もし、文字だけで説明をしていてこの問題が起きてしまったのであれば、描き手側の説明が不足していることが一番の原因だと思います。
「ええっ!?そんなことくらい知らないほうがおかしいよ!」と思う人もいるかもしれません。
しかし、すでに何度かご依頼を請けたことのある方や、お客さんに明らかに知識があるのがわかっている場合は別ですが、前述のとおり、初めてのお客さんがイラスト制作のことを知っている前提で考えてしまうのは、お仕事をする上では大きな問題です。
例えば、携帯ショップに行って、2000円でスマホが持てるという謳い文句で来たのに、「当然知っているはずですよね」という前提でいろんなオプション、条件がついて結局1万円になったり、2000円ではスマホとは呼べないものだったりしたら、イラっときてしまいますよね。描き手側にそんなつもりはなくても、お客さんからするとこれと同じように良くない印象を受けてしまうと思います。
こうしたことが起きてしまうのを避けるために、必ず、実際の仕上がりイメージをお客さんと共有し、認識のずれが起きないようにすり合わせましょう。
表現について参考イメージをすり合わせる
こちらは権利の関係でお見せできないのですが、デフォルトのイラストからどのようにデフォルメした表情変化させるかというのも描き始める前に参考イメージをすり合わせておきましょう。
私が普段描いている表情だと以下のようなものが多いのですが、今回はこれよりももう少し元の形状を保った描き方で描くことになりました。
提案したラフなど
今回は描き始め前のすり合わせ部分が大事なので、メイキングなどは省きます…が、ラフの段階で1点工夫があったので、それだけ載せておきます。
作業前のすり合わせで上の段の描き方で進めましょうとなっていたのですが、追加案として「それぞれ差分でパターン作ろうとしたらこういうことができます!」というのを提案してみました。結果、「こういうのもいいですね!」という話になり、今後のお仕事へと繋がっていっています。
無理をする必要はなありませんが、簡単にプラスアルファが出せる部分はちょっと頑張ってプラスアルファを提案していくと、お仕事が続いていくのでオススメです。
まとめ
- お客さんがどういうときに使いたい表情かを具体的に絞る
- 出口(今回の場合、実況動画配信)をイメージして、自分からも歩み寄る
- 認識のずれが起きないように、極力、画像でイメージ共有する
- お客さんが喜ぶプラスアルファをするとお仕事のチャンスが広がる
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