「ファイル名に日本語を使うのはやめようね」というお話と、更新のたびに最新データをリネームして「〇〇〇_(日付).psd」にするのでなく、最新データは「〇〇〇.psd」の名前のままで更新し続けようというお話です。
今回はちょっと堅い話になりますが、特にチームでの作業を考えている方や大きめのプロジェクトのご依頼を受ける際の参考になれば嬉しいです。
最新データを同名にすることを推す理由
- どのファイルが最新のデータか一目瞭然になる(ファイル名の日付確認が不要)
- 他のツールでそのデータを使う際、更新の度にファイル名が変わると困る
①の理由はイラストを描いている個人の方もイメージしやすいと思います。
いつも同じ場所にある同名のデータが最新という状況は作業しやすいですよね。
でも、実は②が最新データを同名にすることを推す大きな理由です。
ファイル名を別名にして更新管理する例として、ExcelやPDFの場合、以下の画像のように「〇〇〇_(日付).pdf」といった日付がついたユニーク(他と被らない)なファイル名でやりとりするのが一般的ですよね。
こうなっているとファイル名を見ただけでどれがどのデータなのかわかりやすいからです。しかし、この慣習はExcelやPDFが他のツールと連携することを想定しておらず、最小単位であるファイルそのものの名前に履歴を紐づければ、ミスが起きづらいとして生み出されたものなので、画像データなど、他のツールと連携して使うデータの場合、更新の度にファイル名が変わってしまうことによるデメリットが大きいのです。
他のツールと連携する時に考慮すべきこと
ツールは素材データをパス+ファイル名で判別する
例えば、AfterEffectsなどの動画編集ソフトで画像を読み込む場合、以下の画像のように、素材データをパス+ファイル名で指定して読み込んでいます。
この素材読み込みの仕様はツールが変わっても基本的には同じです。
つまり、それぞれの素材データのパス+ファイル名が変わると読み込めなくなるのです。
データ更新の度に素材のファイル名が変わってしまうと編集ソフト側で再度読み込み設定をやり直す作業が延々と発生し続けることになります。
これは個人の作業でも結構な手間になりますし、再設定漏れがあると、1か所だけ前のバージョンを読み込んでいたなどのミスにもつながります。
ファイル読み込みについて触れたので、次にファイル名に半角英数を推す理由を説明しますね。
ツールは日本語ファイル名を上手く読み込めない
これが半角英数でファイル名をつける理由です。
正確には2バイト以上の文字(半角英数以外)をファイル名に使うと編集ツール上で上手く読み込めなくなるためです。
詳しい説明をすると長くなるので省きますが、初期のコンピュータは「アルファベットと数字(半角英数)」を前提として作られたため、それ以外の後から追加された文字(日本語や中国語など)を使ってツール連携しようとすると上手く動かないのが当たり前という風に覚えておくとよいです。
特に会社に入ってゲームやCGの仕事をする時、ファイル名に日本語を使ったら非常識だと怒られる可能性大です。
といっても、実は日本語のファイル名でも、自身のPC環境の中のみであれば読み込みは通ってしまうものもあります。ここが曲者なんですが、上の画像でもわかるようにこういうデータ自体は作れちゃうんですよね。
しかし、日本語のファイル名の素材を読み込んだ編集データを他の人へ渡したとき、受け取り先ではその素材を読み込んでこないため、すべての素材ファイルを手動でつなぎなおす作業が発生します。
チーム制作で望ましいこと
チーム制作では同名ファイルでの素材更新が望ましい
日本語を使ったファイル名をツールに読み込ませると上手く動かないのは前述の通りです。
ゲームやアニメなどの大規模なプロジェクトにおいて素材データが更新されるたびに再読み込み設定をチームスタッフ全員が行うのは非現実的です。
また、ヒューマンエラーの温床にもなります。
例えば、仮にデータの更新が正しく反映できていない人が1人だけいたら、その人だけ他の人と見ているものが違うことになります。この状態でディレクターが「ここをもう少しこうしてください」と全員に対して指示を出したとき、直すべきポイントがずれて伝わったり、何を直せばいいのかわからない、といったことが起きてしまいます。
そこで、同一データは同名ファイルで管理し、更新時はそのファイルを直接上書きをすることで、作業スタッフが個別にツールでの再読み込み作業をしないで済むようするのです。
チーム制作ではファイルのバージョン管理はツールに任せる
「同名で上書きしてしまうと、過去のバージョンに戻せないのでは?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
同名データのバージョンを管理できるツールがあり、バージョン管理はそうしたツールで行うのが一般的です。
提出日などの日付は提出時のフォルダで管理する
もちろん、お客様とのやりとりでお互いに「いつ提出を受けたデータなのか」がわからないと困るので、提出する際に日付のフォルダに入れて提出することでそれがわかるようにします。
ただし、お客様から命名規則指定がある場合はそれに準拠しましょう。
プロジェクトが大規模になればなるほど、厳格にディレクトリや命名規則を固めます。納品データをそのままの名前で使う想定の場合、命名権を外注先に委ねることは稀です。大規模プロジェクトで命名を外注先の自由に委ねている場合は、受け取り側でファイル名をリネームして使っているケースがほとんどです。
「それなら自由につけてもいいんじゃないの?」と思うかもしれませんが、そうではありません。納品物は一定のルールに則って命名されている方が、仮にリネームするにしても管理しやすいのですし、個人や小規模でやっている場合、渡したデータをそのまま使うケースもあります。
また、こうした管理がちゃんとしていることは、外注として仕事を任せるかどうかを判断する信頼の構築にもつながるので、日頃からちゃんとしておくのはプラスになるのです。
総括
今回ご紹介した管理方法であれば、どのバージョンのデータなのかわかりやすい状況は担保した上で、更新がスムーズにできるデータのやり取りを実現できます。
もちろん、素材としては使わない単体のイラストであれば、ExcelやPDFのようにファイル名の末尾に直接日付を付けても問題は起きません。しかしながら、イラストの仕事をされている方の多くは、動画用のイラストやゲーム用のイラストなど、素材としての使用を想定しているお仕事がくることも多いのではないでしょうか。
そこで、基本は半角英数+同名ファイル更新で対応し、お客様から指定があった時だけ、別名で納品するのが良いのではないかと思います。
最後まで読んでくださりありがとうございました!